才能の身につけ方
序
「大学に入ってから遊べ.」等とよく言われるが,逆に「大学に遊びながら入って,大学で真剣に学問に打ち込め」と思う.
そういう事を言うと才能がいる等と言われそうなので,とりあえずこの記事を作成する.
才能とは?
才能とは勉強の上中下を使いこなせることである.
金銭を得るのに喜捨を頂く,投資,労働などいろいろな方法があるように,
勉強にも上中下のようなものがあると考えられる.
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そして必要に応じて,上中下の方法を使いこなせる技術こそが才能だと思われる.
勉強の上中下について
上,定理を考えた人の心境を察する.(時として数学史も知る必要あり.)
中,問題を解ける人の心境を察する.
下,解き方を覚える.
tan 1°は有理数か?
京大で出問された”超難問”とされる問題であるが, 拙ブログは,”読者諸氏がこういった問題を得点源にできるようになる”のが最終的な目的地である.
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tan 1°は有理数か?
必要とされてる知識. ・無理数の定義. ・tanの加法定理. ・数学的帰納法. ・背理法.
- tan 1°は有理数か?(証明の流れ)
tan 1°を有理数と仮定する. tanの加法定理より"任意の自然数nに対してtan n°が有理数ならばtan (n+1)°も有理数である."と証明できる. よって,数学的帰納法より,任意の自然数nに対してtan n°は有理数であると証明できる. しかし,tan 30°は無理数のため仮定は偽. つまり,tan 1°は無理数. Q.E.D.
そもそも論
数学の問題には二種類ある. ・...を求めよ ・...はか?(または示せ.)
この問題は後者なので,結論を先に決める必要がある.
何故,この問題を難しく感じるか?
・有理数のレア度に気づいてない. ・有理数であることの証明の難しさに気づいてない.
・整数が出たら数学的帰納法が使えるなという発想がない.
有理数のレア度について
まずは実験するというのが数学に於いても常套手段である. 循環しない無限小数は無理数であることを考えれば,有理数はレアであることに気づき証明の指針がたつ.
- 受験テクニック1
有理数であることを示すには分数でかける事を示さなければならない. ・これは入試問題としても,広く数学の問題としても難しすぎる.
よって結論は無理数と推測できる.
受験テクニック2
整数が絡む問題は数学的帰納法をほとんど使う.
この問題では使わないが,素数,特に'2'と'3'は重要である.
この場合,どういう勉強をすればいいか?
・上,定理を考えた人の心境を察する,有理数の少なさについて実験してみる. ・中,解ける人の心境を察する,受験テクニックをマスターする.
・下,数学的帰納法,背理法について答案の書き方をマスターする.(実は一番重要.)
紹介できなかった考え方1
条件,制限を外したり付けたりする. ・岡潔先生が広中平祐先生に 「問題を解くために制限をつけるのではなく,逆に制限を外して理想化した難しい問題を解くべきである.」 とアドバイスし,フィールズ賞に繋がった事はあまりに有名.
紹介できなかった考え方2
”紹介できなかった考え方1”とかぶる内容ではあるが,極端な例を試す.(一般化)
・例えばあらゆる正の実数から正の実数への関数と言われれば「タクシーでの運賃.」というような極端な関数を考えてみる.
結論
授業を受ける際, できればノートを取り”下”をマスターするだけでなく, 先生の考え方を想像したり, 知っている定理の成り立ちを想像してほしい.
そういった勉強の態度こそが”才能”であると思う.
蛇足(腕試し)
空間の1点Oを通る4直線で,どの3直線も同一平面上にないようなものを考える. このとき4直線のいずれともO以外の点で交わる平面で,4つの交点が平行四辺形の頂点になるようなものが存在することを示せ.
(一次従属の定義なしでの証明を求む.)
2006年度,2008年度京都大学入試問題から引用.
腕試し(証明の流れ)
4本の直線をA,B,C,Dと名付ける. A,Bを含む平面をPとし,Pに平行な平面QとC,Dとの交点をc,dとおく. 線分cdと並行で長さが同じ線分をA,Bから持ってくることができる, それをa,bとするとa,b,c,dは平行四辺形の頂点をなす. よって題意は示された. Q.E.D.